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第4話 旅の目的②

作者: アイさん
last update publish date: 2025-12-12 18:51:39

「お兄ちゃん!助けてー!」

「待ってろ!すぐ助ける!…くそっ、騎士団より悪魔が多すぎる…」

理由は分からないが突如現れた悪魔の大群は町に現れ、たくさんの人々を殺戮していた。

俺はちょうど騎士団の仕事でこの町にいたので仲間と共に悪魔に対抗していた。

大半の悪魔は倒したはずなのだがどういう訳か悪魔は増える一方でエバルフ達は苦戦していた。

その目の前には妹が悪魔に取り囲まれていた。

「エバルフさん!悪魔が多すぎて我々じゃとても…」

「くそっ、団長がいればいいんだが今あの人は他の任務だからな。どうすれば…」

エバルフが悩んでると妹を囲んでいた悪魔が妹を切り刻もうと爪を振り下ろしたその時。

グサッ…

何かが斬られた音がした。

これは妹が斬られた音ではなく、悪魔が斬られた音でその悪魔は斬られた背中を押さえながら倒れてしまった。

悪魔を斬ったのは黒いローブを身にまとっていて顔はフードを被っていたのでよく見えないがどことなくグレンに似ていた。

周りにいた悪魔は仲間が斬られた事によってこのローブの男を敵と判断した。

そして爪を伸ばして襲いかかった。

しかし、その男は目に見えない速さで悪魔を斬りまくっていった。

そして男が目で判断できる速さになった時には悪魔達の体から切り傷が出てきて血を吹き出しながら倒れた。

それを見たエバルフは妹が助かったと思ってホッとした。

「よかった。妹は無事に助かっ…」

エバルフは目の前の状況を理解するのに少し遅れたがそれに気づいた時彼は狂ったように発狂した。

「ウワァァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

そこには悪魔の死体の中に妹の死体まで混じっていたからだ。

「お気を確かに、エバルフさん!…なんて事を…」

横にいた部下の男はエバルフの妹を見てから黒いローブの男を睨みつけた。

黒いローブの男は悪魔と一緒に妹まで斬ったのだ。

しかし、謝罪もせずにその場を立ち去ろうとした。

「…待てよ。」

エバルフはうつむいているが地面につけた手からは怒りで震えているのがわかった。

立ち去ろうとするローブの男を呼び止めたると男は言った。

「…何を怒っている?俺の射程距離にコレがいただけだ。運が悪い。」

「な…に…」

「そんな睨むな。助けれなかったのはお前の弱さ以外何もない。」

その男は悪びれるどころかエバルフの弱さが原因とハッキリ言った。

エバルフはその男のイカれた発言に我慢できず、手元にあった剣でその男を斬りつけようとした。

しかし男はその剣をかわすとエバルフの首筋を手で叩きつけ、エバルフは地面に倒れた。

「弱いくせに人助けなんざ笑わせる。俺はお前みたいな弱いくせに守るとかほざく奴が大っ嫌いなんだよ。」

ローブの男はそのまま去ろうとするがエバルフの部下達は男の目の前に立ち塞がった。

「どけ、死にたくなかったらな。」

「どきません!さっきの言葉訂正して下さるまで…どきません!」

部下の1人が懸命になって言うが顔には涙と恐怖でブルブル震えているのが伝わってくる。

「はぁ、無理するな。そんな事しても悪魔祓いの俺に勝てるわけないだろ?」

ーそうだ、やめろ…お前達じゃ勝てな…

「勝てるか勝てないかじゃない!あなたは私たちの職業を…騎士団の誇りを侮辱した!訂正するまで絶対に許さないぞ!」

「…はぁ、そんなに死にたければ…今すぐ殺してやる。」

男はそう言って剣を抜き始めた。

「よせ…やめろ…やめろーーー!!」

その後、男はエバルフ以外の部下達を容赦なく殺した。

その時のエバルフには絶望しかなかった。

そして思った。

「許さない、悪魔祓い」

エバルフはその憎しみを全て強さに変え、3年後12騎士長の1人となった。

昔の純粋な夢を抱いたエバルフ・シュロンはもういない。

いるのは憎しみによって生きているエバルフ・シュロン。

そう、俺は強くならなきゃいけない。ならなきゃ誰も助けられないー

「…そうだ…強くならなければ…誰も守れない…」

諦めかけたエバルフは再び落ちている剣を持ち立ち上がった。

「…?」

「悪魔祓いを装って人々を殺める貴様ら邪道を…俺は…許…さない!」

その瞬間、エバルフの体の周りから黒い魔力のオーラが放たれた。

そのオーラと共に体が黒く変色し、右片方の目だけ黒から赤に変わった。

「何あれ!?あの人の体が黒く…」

後ろで見ていたミーナは当然驚いた。

その黒い姿がまるであの時のシェスカに似ていたのだ。

しかし、その姿を見て驚いたのはグレンも同じだった。

「まずい…あれは悪魔化だ。下手したらあいつ悪魔になるぞ…」

「その通り!いやー、ここまで仕上げるの本当大変だったよ。」

突然聞こえてきた声は今まで気にしてなかったエバルフのもう1人の部下のロフィスだった。

見た目は部下と同じ様に鎧と剣を持った騎士らしい姿で髪と瞳は明るい茶色の男。

ロフィスは今までグレンとエバルフに気づかれないように建物の屋根の上に隠れていた。

そしてそのまま屋根から飛び降りでグレンの前に着地し。

「初めまして、紅の悪魔祓い・グレン。そしてありがとう。あのエバルフをここまで悪魔化させるのに協力してもらって。」

優しく笑いながら感謝の言葉をするロフィス。

グレンはそれを無視して。

「お前は何者だ。魔法騎士団のやつじゃないな。」

「俺か?んー…知ってどうする気?」

ロフィスはおちょくっているのか空中に浮くと逆さになった状態でグレンの顔と向き合った。

向き合った直後に一瞬でエバルフの真横に移動した。

「空間移動…」

「そう、これはあんたと同じ転移魔法。あんたに追いつけたのは予知能力とこの空間魔法のおかげって訳だ。」

「なるほど、通りで最近俺に追いつく距離が狭まってたのか。…で、お前は何者だ?人の悪魔化を望んでるから人間ではなく悪魔なのは確かだ。…そしてそこらの悪魔とは比較にならない程の魔力だ。」

グレンが悪魔祓いになってからビビった事はこの10年間で数える程度しかない。

そのグレンが今ビビっているという事はその周りにいる部下達とミーナもビビっていた。

そしてロフィスは口を開けた。

「…いいだろう…教えてやるよ。俺は悪魔だが他の奴らとはケタが違う。なぜなら…俺はあの悲劇の国で生まれた悪魔!その名も悪魔の上の存在…獄魔(デーモン)だ!」

「獄魔…なるほど、俺の魔法をかわせたのも理解できるな。」

「まあ君ならその気になれば俺なんて普通に殺せるだろ?」

そう言いながらもロフィスは口角を吊り上げながら不敵な笑みを浮かべた。

そして悪魔化してるエバルフの肩に手をポンと置き。

「さあエバルフ。あの憎っくき悪魔祓いを殺しなさい。そうすればお前の憎しみはなくなるぞ?」

ロフィスの言葉によってエバルフは甲高い雄叫びをあげ、黒くなった腕はさらに歪さを増して人の腕の原型をとどめない形に変わっていく。

顔はさっきと同じで右片目だけ赤くてさっきと変わっていないが物凄い形相でグレンを睨みつけていた。

ー来る!

そしてその一歩目が早かった。

数メートル離れてるのにも関わらず一歩目でグレンに近づき剣を縦に振るった。

グレンも大剣でそれを防ぎ回避するが予想以上の威力のため少し押され気味だった。

回避してからバックステップで距離を保ってからグレンの手から光の球体を発現させ、その球体をエバルフに向けるとそれを光線のようにして打った。

(くらえ!この光の最上級魔法は回避不可能だ!)

キィィィン!

しかし、エバルフはその光の光線をいとも簡単に跳ね返してしまう。

「俺の光属性の最上級魔法を…」

自分の中の最上級魔法の中で最速を誇る光魔法を見切られ、動揺を隠せないグレン。

「…許…さない…。許さないぞ…紅の悪魔祓い!」

「俺はお前に恨みを持たせるようなことをした覚えはない。」

「ふざけるな…妹を…妹を返せ!」

何を言ってる?俺はエバルフと初対面だし、ましてやあいつの妹なんて知るわけが…

「そうだエバルフ!そいつがあの時お前の妹を殺した張本人だ!遠慮せずに盛大に殺せ!」

ロフィス…どうやらこの訳のわからん自体を招いた張本人だな。

一方ミーナと倒れていた部下たちは変わり果てたエバルフを見て。

「やはりあの人は3年前の事を…このままじゃあの悪魔化とやらに…」

「くそ!…ロフィスの奴め、前々から気にくわない奴だったがまさかあいつが悪魔だったとは…」

どうやらエバルフ以外の何人かの部下はロフィスの心に気づいていたようだ。

しかし、エバルフはなぜグレンを恨むのか。

それが気になってミーナは聞いた。

「あの、すみません。」

「!?君はあいつ(グレン)の…」

「怖がらなくてもいいです。私は勝手にグレンについて来てるだけなんで。」

部下たちはミーナに声をかけられた瞬間ビビって一歩後ろに下がった。

「ああ、すまない。…で、何…かな…?」

謝っときながらまだビビってる。

私がグレンと旅してるからってグレンみたいな人と勘違いされるのは嫌だなぁ。夢の中のグレンはいい人だけど。

そんな事を思いながらミーナは部下の人達にエバルフがなぜグレンを恨むのか聞いた。

エバルフが騎士団に入った理由。妹と部下が悪魔祓いに殺された事。その悪魔祓いがグレンにそっくりな事をまとめて全部教えてもらった。

「…ということだよ。エバルフさんはそれ以来強さだけが人を守るという信念を持たれたが…」

「その信念はやがて憎しみに変わり、市民の命よりも悪魔祓いの復讐心の方が強くなった。」

「ロフィスのせいだ!あいつがエバルフさんを洗脳したんだ!チキショー!」

最後に言った部下は地面を殴りながら涙を流した。

それはただ忠誠心が強いから仕方なく泣いてるのではなく、心の底からエバルフを心配しての涙だというのがミーナに伝わった。

そしてミーナも鼻をすすり、両目から雫が頬をつたった。

「…エバルフさんは妹を失って、全てを恨みたくなる気持ち…すごく分かります…でも…でも、妹さんは…彼の復讐を望んではいないはずです!」

ミーナは涙を拭き払ってグレンとエバルフが戦ってる方を向いた。

「お嬢ちゃん…まさかあんたあの2人を…」

「止めてみせます!私は決めたんです…グレンを元の優しい人に戻すこと!そして、もう二度と悪魔の悲劇を生まないためにも…私はエバルフさんの悪魔化を止めます!」

そしてミーナはグレンとエバルフの方へ歩き出した。

「うぉぉぉぉぉぉ!!!」

剣を振りかぶりながら接近するエバルフ。

グレンは悪魔化したエバルフに苦戦を強いられていて、今の剣の一撃も大剣で打ち流してかわした。

(おいグレン!なんで本気で戦わん!?)

「お前か…こんな時に声をかけてくるな、後にしろ!」

後ろにバックステップしてる時にグレンの中にいる悪魔が周りに聞こえない声で喋りかけてきた。

(アホか!死んだら何にもなんねーだろ?さっさと黒炎使って獄魔とあの人間殺しちまえ!なんで使わねーんだ?)

「うるさい!今戦ってんのは俺だ!いちいち俺に指図すんじゃねー!」

グレンは悪魔の声を吹き払うかのように大剣を振ると風魔法の効果でエバルフに向かって斬撃が飛んだ。

しかし、その斬撃を軽く避けるとエバルフは風魔法の身体強化で速さを増しながら突っ込んできた。

グレンはどんなに苦戦を強いられても黒炎を使わないのでお互い一歩も譲らないまま攻防戦が続く。

「(くそっ!分かってる…黒炎使っちまえば余裕で殺せる…。だが…今あいつは殺しちゃいけねーような気がする!かといって、このままじゃ俺もヤバイ…どうした俺?変な気持ちを起こす前にいつもみたいにさっさとこんな奴殺しちまえよ!)」

そんな事を考えてると剣がグレンの右肩に擦り、マントが破けるとそこから血が流れていた。

その影響で身体の重心がぐらついて地面にこけてしまう。

エバルフはグレンのこけた姿を真顔で見下ろした。

「ぐっ!…」

「終わりだ…俺の妹を殺した外道の悪魔祓い。死ねっ!」

エバルフが剣を振り上げようとしたその時。

「やめてください、エバルフさん!」

剣を振りかぶった隙に走ってグレンの目の前まで行くと両手を広げてグレンを庇う姿勢を作った。

それに気づいたエバルフは振りかぶった状態のまま静止した

「邪魔するな!どうせお前も悪魔祓いの手先だろ?お前は後で殺すからそこをどけ!」

エバルフの左目と赤い右目がミーナを一直線に見つめた。

怖い、…足が震えているのが自分でも感じる…でも…私はそれでも…

ミーナは怖くて震えながらも力を振り絞って言い放った。

「もう、やめて下さい!あなたは…あなたの目指していた騎士団は…復讐を果たすだけの…そんなものだったんですか?」

「何ぃ…?」

エバルフの殺気がきつくなり、剣を握る力が強くなった。

「バカがミーナ!あいつの怒りを高めてどうすんだよ。そいつの目的は俺だけだ。お前はとっとと退が…」

グレンがいち早くエバルフの殺気に気づき、ミーナに退がれと言おうとした時にはエバルフは剣を振り下ろしかけていた。

「くっ…!」

「あぁ、あの子殺され…」

部下達もグレンもダメだと思った時、ミーナは一言。

「あなたの妹はそんな姿を望んではいないはずです。」

その一言でエバルフの剣がミーナの頭の上でピタッと止まった。

「バカな…奇跡だ…」

多分この場にいるほとんどがびっくりしたはずだ。

あのロフィスでさえ驚きのあまり開いた口が閉じれなかった。

「俺の…妹…」

「あなたの妹は3年前に殺された。しかもグレンにそっくりな悪魔祓いに。」

「…!?」

「…なんだと?」

その言葉にグレンも驚いたがミーナはそれでも話す事を止めずに。

「確かにそんな辛いことがあれば誰だって辛くてその殺した奴に復讐したくなる気持ちも…私には分かります。」

「ふざけるな!お前なんかに何が分か…」

「分かるよ。私も同じように学校の親友を悪魔に殺されたから。」

「…くっ!お前は所詮友達だろーが!俺は家族を失った!たった1人の…残された1人の家族を奪われたんだ!こんな気持ち…お前なんかに…」

「所詮って何よ?」

ミーナの表情は強面に変わり、声が低くなった。

「大切な人は家族以外にもあるはずよ。あなたたち騎士団は市民の人の事も所詮赤の他人って言うの?」

その言葉にエバルフは何も返せなかった。いや、今の自分の事を考えると返す言葉なんてなかった。

そしてエバルフは正気を取り戻したのか次第に赤くなった右目が戻っていき黒くなった体も元に戻っていった。

「何が全ての人々を守るよ…何が騎士団は市民のヒーローよ。簡単に闇に堕ちてしまうような弱いヒーローなんていない方がいい!今のあなたは騎士団に相応しくないって昔のあなたならすぐ気づけたはずよ!」

「……!?」

「…今ならまだ間に合うはずです。もう、復讐の為に生きるのはやめて下さい。昔の、純粋に市民を守ろうとするエバルフさんに戻って下さい。天国にいる妹さんはそれを望んでるはずよ。」

ミーナは最後に優しくそう言った。

エバルフはようやく自分の愚かさに気づいたのか上を向きながら号泣し、そのまま座り込んだ。

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